【許認可等の話】美容室の継承から学ぶ!許認可等の基礎知識

登場人物紹介

いち
行政書士事務所所長の行政書士
かなえ
起業の夢を無事かなえたWEBデザイン会社経営の女性 会社設立編はこちら

※文中の赤文字は用語です

美容室を引き継ぐには許認可が必要?

美容業の事業承継に必要な手続きとは?

かなえ:「最近、美容師をしている友人が『お母さんのお店を継ぐことになった』って話していて。
美容室って営業に許認可が必要なんですよね?
その手続きを面倒がっているんです。」

いち:「はい、美容業の事業承継は保健所への届出が必要です。
以前は、美容室を改めて始める際の届出には様々な資料を提出する必要があって、とても面倒な手続きが必要だったんです。
お母さんが継ぐ際にご苦労されたのかもしれませんね。」

2023年の法改正で何が変わったの?具体的に何をすればいい?

かなえ:「以前、ということは…今は違うんですか?」

いち:「はい、2023年末に法改正があって、事業承継がとても簡単になったんですよ。」

かなえ:「そうだったんですね、どんな法改正があったんですか?」

いち:「2023年12月13日施行の理容師法第十一条の三の改正で、個人でも法人でも、保健所に事業者変更を届け出る書類(自治体により名称が違います)を提出するだけで美容業を引き継ぐことができるようになりました。」

登記の変更、税務署や自治体、年金事務所への届出、金融機関での名義変更は必要です

かなえ:「書類一枚で済むようになったんですか、それは助かりますね!
友人に、この話は教えてあげた方がよさそうですね。」

認可等とは?種類と意味をやさしく解説

かなえ:「教えていただいてありがとうございました!
でもなぜ“許認可”が必要な業種があるんでしょう?」

いち:「国が、許認可等が必要としているのは、“一定以上のクオリティが保てないと国民の健康や安全が脅かされる恐れがあると判断された事業”です。
消費者が安心して生活をするためには、一定の業種を国が管理することは必要なことなんですよ。」

許可・認可・届出・登録・免許の違い

かなえ:「いちさんが許認可じゃなくて、等を付けるのはなぜなんですか?」

いち:「“許可”と“認可”だけはないことがその理由で、ひとつの行政用語として使われています。
主なものでは、他に届出、免許、登録というものがあるんですよ。
その業種がどのくらい公共の福祉(他人の利益との兼ね合い)に影響を与えるかで、簡単にOKが出るものからなかなか出にくいものまで幅広いんです。」

許認可等の種類意味行政側は断れるか起業時に携わる機会があるか
登録必要書類を提出し帳簿に登録されればOK断れないやや多い △
届出形式要件を満たせばOK断れない多い ○
許可原則禁止されていることを解除するため断れる多い ○
免許資格がある者にその資格内の行為を認める条件が満たされていれば断れない特定業種のみ
認可個人が行うことに国がお墨付きを与える断れるまれ ×
※行政法参照

認可は、学校法人の設立認可、鉄道、運輸系などの公益性が強い分野に与えられるもので、一般的な起業家が関わる事業で、認可が必要になるケースはそれほど多くありません。

かなえ:「私も免許を持っています、自動車運転免許!」

いち:「自動車運転免許も許認可等の一つですよね。
でも実は自動車運転免許は免許ではなく、“許可”の分類に入るんですよ。
行政用語ってややこしいですよね。」

許認可が必要な主な業種一覧

どんな業種に許認可が必要なのか?

かなえ:「許認可等が必要な事業ってどのくらいあるんですか?」

いち:「現在、日本には、約1万5千も許認可等が必要な事業があるんです。
その中でも、特に起業時に選ばれやすい業種を挙げてみましょう。」

業種許認可等の種類受付先
理容・美容業届出保健所
建設業許可都道府県
飲食業許可保健所
酒類販売業免許税務署
旅行業登録運輸局
介護事業許可都道府県
中古品販売許可警察署

かなえ:「許認可等が必要な業種って思っていたよりもずーっと多いんですね!
そんなにあると自分の事業があてはまるのか、あてはまらないのかを調べるのも大変そうですね。」

いち:「手間はかかりますが、事業を始める前にあらかじめ調べておくことをおすすめします。
行政の判断によっては出ない場合もあるので、準備段階から確認しておくのが安心ですね。
許認可等の扱いは、都道府県によって違いがある場合があるので、たとえば『東京都 飲食店 許認可』などと検索すると良いと思います!」

許可なしで営業するとどうなる?無許可営業のリスクまとめ

行政処分・刑事罰・損害賠償の具体例|“知らなかった”では済まない理由

かなえ:「なるほど。仮に許認可等が必要な業種を許可なしで営業したらどうなるんですか?」

いち:「たまに無許可営業がニュースになることがありますよね。
実はあれって、ただ注意されるってレベルでは終わってないんです。
刑事罰や営業停止など、事業の存続に関わる深刻な影響が与えられる場合があります。」

かなえ:「手続きをしないで開業する背景にはどんな事情があるんでしょうね。」

いち:「たとえば、許可を取らないまま開業してしまう背景にはこんな事情があるといわれています。」

許可を取らないまま開業してしまう背景

・許認可の存在を知らなかった(認識不足)
・面倒・費用がかかるので後回しにした
・ネットで簡単に集客・販売ができると思い込んだ(無許可エステなど)

かなえ:「これって…普通にありそうな話ですね。」

いち:「しかし、知らなかったでは済まされないのが許認可等なんです。
下記のようなリスクがあるんですよ。」

リスクの種類内容具体例
行政処分営業停止命令、施設の使用禁止、改善命令などの行政措置を受ける無許可で飲食店を営業→ 保健所が営業停止命令
刑事罰法律違反により罰金刑や懲役刑の対象となる建設業を無許可で受注→ 3年以下の懲役または300万円以下の罰金
民事責任顧客や取引先から損害賠償請求を受けるリスクがある無許可の介護サービスで事故→ 家族から損害賠償請求
補助金・支援の停止国や自治体からの補助金・融資・認定制度の対象外となる創業補助金の申請時に無許可が発覚→ 審査落ち
信用の喪失顧客・取引先・金融機関の信頼を失い、取引停止の可能性がある融資を受けた銀行が調査→ 契約解除・融資打ち切り
損害拡大の連鎖事故・火災などの際に保険が適用されず、責任が拡大する無許可営業中に火災→ 火災保険が適用外、賠償責任も発生

まとめ:許認可等は事業の土台、起業前に確認しよう

かなえ:「許認可等のしくみが少しずつ分かってきました。
将来、許認可が必要な事業を始めることもあるかもしれませんので勉強になりました!」

いち:「制度のポイントを知っているだけでも無駄な手続きを省けたり、トラブルを防げたりしますからね。

許認可等の取得は、安心して事業を続けるための大事な土台でもあります。
起業前に許認可等が必要な事業かどうかはぜひ確認しておきましょう!」


【許認可等の話】美容室の継承から学ぶ!許認可等の基礎知識 終わり

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