NPO法人を設立する前にまず確認!特定非営利活動20分野とNPO法人設立16要件 ーNPO法人設立ガイド2ー

登場人物紹介

いち
行政書士事務所所長の行政書士
ゆうき
事業を始めたいと漠然と考えていた大学生。現在起業準備中。ゼロからの事業計画編はこちら

NPO法人設立のきっかけ

ゆうき:「先日、いちさんに教えてもらったNPO法人のことを知り合いに話したんですよ。
それで少し盛り上がりまして。」

いち:「それは良かったですね。その方はどんな人なんですか?」

ゆうき:「この人も起業セミナーで出会った方なんです。
彼は、数年前に亡くなった祖父母の家を継いだんですが、遠方で仕事をしているため一度も住んでいなくて今は空き家になってるんですって。
でも固定資産税は掛かるし、家や庭の管理もしなければならない、なんとかできないか調べてみたら、同じように空き家の管理に困ってる人がすごく多いって知ったみたいなんです。」

いち:「ふむふむ。」

ゆうき:「そこで彼はこれはビジネスになるんじゃないかって考えたんです。
でも採算が取れるか微妙なところがあって、なかなか踏み出せずにいたみたいなんですよね。」

いち:「空き家問題は、たびたびニュースにもなる社会的な課題ですね。
自治体も様々な対策をしているみたいですが、今一つ実効性に欠けている印象です。
民間からそのような話がでてくるのはとてもいいことだと思いますよ。」

ゆうき:「そうなんです!それで僕がNPO法人でなら何とかなるんじゃないかと思って、この前教えてもらった内容を話したら、すごく食いついてきて。
『それならやれるかもしれない!』って、NPO法人を立ち上げることに決めたみたいなんです。」

いち:「えっ、行動が早いですね!」

ゆうき:「しかも、『一緒に設立に必要な10人のメンバーを集めよう!』って僕まで誘われちゃったんですよ!」

いち:「それは急展開ですね…、ゆうきくんはどうするつもりなんですか?」

ゆうき:「起業に誘われて嬉しい反面、どう考えて判断したらいいのか…
やるにしてもやらないにしても、NPO法人を知らないと決断ができません。
それで、いちさんにもっとお話を聞きたいと思ったんですよ。」

いち:「たしかにそうですね。
では、今回はNPO法人を設立するまでに知っておかなければならないことをお話ししましょうか。」

NPO法人を設立する前に知っておくべき流れと手順

NPO法人設立で必須!特定非営利活動20分野とは?

いち:「NPO法人は会社と違って、設立要件や認証手続があるので、しっかりとした準備が必要なんです。
会社のように思い立ったらすぐに作れるものではないんですよ。」

ゆうき:「そうなんですね…何から始めたらいいんでしょうか?」

いち:「まず最初に、活動内容がNPO法人として成立するかを確認しましょう。
国の定める、特定非営利活動20分野(特定非営利活動促進法第2条第1項 ※以下NPO法)のいずれかに該当しないと、そもそもNPO法人としては認められないんです。」

特定非営利活動20分野

① 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
② 社会教育の推進を図る活動
③ まちづくりの推進を図る活動
④ 観光の振興を図る活動
⑤ 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
⑥ 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
⑦ 環境の保全を図る活動
⑧ 災害救援活動
⑨ 地域安全活動
⑩ 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
⑪ 国際協力の活動
⑫ 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
⑬ 子どもの健全育成を図る活動
⑭ 情報化社会の発展を図る活動
⑮ 科学技術の振興を図る活動
⑯ 経済活動の活性化を図る活動
⑰ 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
⑱ 消費者の保護を図る活動
⑲ 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
⑳ 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動

ゆうき:「空き家の再生はと…、“③のまちづくりの推進を図る活動”が該当していそうですね。」

いち:「はいそうですね、加えて空き家再生は、以下に該当する可能性があります。」

①保健、医療又は福祉の増進を図る活動
▼高齢者の居場所づくりや福祉サービス拠点に空き家を利用する場合

②社会教育の推進を図る活動
▼空き家を活用して学習の場や子ども食堂を運営する場合

⑦環境の保全を図る活動
▼放置空き家の倒壊リスクや景観悪化を防ぐ取り組みとして活動する場合

ゆうき:「うん…、とりあえず特定非営利活動20分野はクリアできていそうです。」

全て満たしていないと設立できない?NPO法人設立16要件とは

いち:「さらに、次の16要件に適合しなければなりません。」

NPO法人設立の16要件

① 特定非営利活動20分野のいずれかに該当する活動であること
② 社会全体の利益になる活動であること
③ 営利を目的としないこと
④ 政治活動を主目的としないこと
⑤ 宗教活動を主目的としないこと
⑥ 暴力的破壊活動を目的としないこと
⑦ 社員が10人以上いること
⑧ 理事が3人以上いること、監事が1名以上いること
⑨ 役員(理事・監事)のうち、親族が全体の3分の1以下であること
⑩ 役員が成年被後見人・被保佐人・破産者でないこと
⑪ 会計が適正に行われること
⑫ 所轄庁に設立申請を行うこと
⑬ 定款を備えていること
⑭ 収支予算書を備えていること
⑮ 設立趣旨書を備えていること
⑯ 活動が公序良俗に反しないこと

いち:「一般的に、このなかで大きな壁になるのは、⓻社員10人以上の確保 ⓽役員のうち、親族が全体の3分の1以下であること、の2つです。
活動に共感する人を10人以上集めたり、信頼できる理事や監事の候補を探するのはなかなか容易ではないと思います。
それ以外は、書類をきちんと整えることや、営利目的ではないという基本姿勢を満たせばクリアできるでしょう。
では、各項目を説明します。」

①活動内容が特定非営利活動20分野のいずれかに該当すること

活動内容が、法律で定められた20分野のいずれかに該当しなければなりません。

いち:「これはクリアできる可能性がありそうですね。」

ゆうき:「はい。社会貢献のためにやりたいことがあっても、特定非営利活動20分野に該当していなければ、NPO法人として活動ができないんでしたね。」

いち:「はい、でも実はNPO法人として活動ができなくても、法人格のないNPO(非営利活動団体)として活動することは自由なんです。
法人化できない場合はそんな選択肢もあるんですよ。」

②社会全体の利益になる活動であること

特定の人や身内のためじゃなくて、社会全体の役に立つ活動であること。

③営利を目的としないこと

NPO法人は利益を出してもOK
ただし、それを会社のように構成員で分配したらダメ。
利益は、活動に使って社会に還元することが前提です。

④政治活動を主目的としないこと

特定政党を応援するために設立するような団体はNPO法人にはなれません。

⑤宗教活動を主目的としないこと

布教や宗教儀式を目的に設立することはできません。

設立要件⑥:暴力的破壊活動を目的としないこと

社会を壊すことを目的としたNPO法人は作れません。

⑦社員が10人以上いること

設立時点で、最低10人の社員が必要です。

いち:「社員とは議決権を持つ構成員のことで、いわば設立メンバーの事です。
これが最初の大きなハードルになるでしょう。」

ゆうき:「たしかに、設立の趣旨に共感して一緒に活動をしてくれる人を10人探すのはかなり大変でしょうね。
社会人なら仕事も辞めなくてはいけないでしょうし。」

いち:「必ずしも仕事を辞める必要はなくて、その方の状況次第でしょう。
なぜなら、10名の社員は、皆が常任でみっちり活動する必要はなく、ほかの仕事との兼任でも非常勤でも問題がないからです。
最低10人と規定されているのは、それだけ多くの共感を集める活動じゃなくてはNPO法人としてふさわしくない、と考えられているからなのでしょうね。」

⑧理事が3人以上、監事が1名以上いること

NPO法人には、理事が3人以上必要で、そのうち1名が代表理事(法人を代表する人)になります。
また、監事が1人以上必要です。

いち:「理事は法人の業務執行者のことで、監事は監督官のような存在です。
理事、監事は常勤である必要はありませんが、現実的には、事実上常勤ともいえる日常業務を行う人は必要です。
これが理事になるケースもあるでしょうね。」

ゆうき:「その場合は、ほかの仕事をもっていると難しそうですね。」

⑨役員のうち、親族等が全体の3分の1以下であること

NPO法人では、役員全体の3分の1を超えて親族等を含めてはいけません。
内縁関係や同居者なども対象と判断される場合もあります。

いち:「よって、理事3名監事1名の最小構成だと、自分以外の親族は理事にも監事にもなれない、ということになります。」

ゆうき:「家族をメンバーにしたらダメなんですか?
活動の趣旨に賛同する家族もいると思うんですが…」

いち:「それは、公益性の高いNPO法人を“親族のための団体”にならないようにするためなんです。
もし仮に、役員のほとんどが親族だったら、外から見れば、身内で助成金や補助金、寄附金を動かしてるんじゃないかって思われる可能性がでてくるでしょう?」

ゆうき:「たしかに…そう疑われたら社会の信頼は得られないかもしれませんね。」

いち:「その可能性を排除することが目的の規定です。
NPOは“みんなのため”に活動するのが前提なので、役員の構成にも公平性が求められるんです。
だから親族は全体の3分の1までって制限をつけて、意思決定が公正に行われるようにしているんですよ。」

⑩役員が成年被後見人・被保佐人・破産者でないこと

成年被後見人・被保佐人・破産者は役員になれません。

いち:「成年被後見人や被保佐人、破産者が役員になれないのは、判断能力や財産管理に法律上の制限があったり、信用上の制約を受けていたりするからです。
つまり、法人の業務を適切に遂行し、責任を負うことができる立場の人でなければ役員にはなれない、ということですね。」

⑪会計が適正に行われること

法律に基づき、会計帳簿をきちんと整備して、会計基準に則った処理をしなければなりません。

いち:「寄附金や会費を扱うNPO法人では、お金の使い方の透明性がとても大切です。
不正を防ぐためにも不可欠な要件なんです。」

⑫所轄庁に設立申請を行うこと

NPO法人になるには、主たる事務所の所在地を管轄する都道府県や政令市に正式に申請して、認証を受ける必要があります。

いち:「これをクリアして初めてNPO法人を名乗れるんですよ。」

ゆうき:「勝手にNPO法人を名乗って活動することは認められないってことなんですね。」

⑬定款を備えていること

団体の目的や事業内容、役員の仕組み、会計年度などをきちんと明文化した定款を備えていないと、NPO法人として認められません。

いち:「定款(ていかん)とは、その団体の根幹となるルールブックであり、いわば“NPO法人の憲法”のようなものです。」

※詳細は次回以降に説明します

⑭収支予算書を備えていること

収支予算書を必ず作成しなければなりません。

いち:「収支予算書とは、お金の収入と支出の見込みをあらかじめ示す書類です。
NPO法人は公共性の高い活動をする団体なので、寄付や会費などをどのように使うのかをきちんと明らかにしなければなりません。
設立申請のときに予算書を提出することで、行政や支援者に“信頼できる団体です”と示すんですよ。」

ゆうき:「夢や想いだけじゃなく、ちゃんと数字の計画も必要ってことですね。」

※詳細は次回以降に説明します

⑮設立趣旨書を備えていること

設立趣旨書を必ず作成しなければなりません。

いち:「設立趣旨書とは、NPO法人を立ち上げる理由、“なぜこの活動をするのか”を示す重要な書類です。

前提として、NPO法人設立が認められるには申請をして設立審査とパスする必要があります。
審査では、設立趣旨書がNPO法人としての公共性や公益性を判断する重要な資料になるんです。」

※詳細は次回以降に説明します

⑯活動が公序良俗に反しないこと

社会的に常識を外れた活動や法律に違反する活動、差別を助長するような活動はNPO法人としては認められません。

NPO法人設立のポイントまとめ|NPO法人には審査がある!

ゆうき:「NPO法人設立には審査があるんですか。
ということは、要件を満たせば必ず設立できる、というわけではないんですね。」

いち:「はい、そこも要件を満たせば設立できる、株式会社や合同会社などと大きく違う点ですね。
NPO法人は、単に書類を整えるだけでなく、社会的意義や公益性がある活動かどうかも見られるので、審査が不可欠なんです。」

ゆうき:「設立されるには他の人の判断に委ねなければならない部分があるんですね。
理念や活動の内容、正確な書類を用意することが重要なのはよく分かりました。
人を納得させるためにも必要なんですね。」

いち:「はい、その通りです。
まずは、16の設立要件を理解しておくことが、NPO法人をスムーズに立ち上げる第一歩になります。
要件を押さえながら、自分たちの活動の目的や方針をより明確にしておくことは、将来のNPO法人運営にとっても大切な過程になるはずですよ。

では次回は、実際に設立の準備を進めるために必要な書類や手続きの具体的な流れについて説明しましょう。」

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