ここがNPO法人設立の要!定款・事業計画書・収支予算書を正しく作る -NPO法人設立ガイド4-

登場人物紹介

いち
行政書士事務所所長の行政書士
ゆうき
事業を始めたいと漠然と考えていた大学生。現在起業準備中。ゼロからの事業計画編はこちら

準備フェーズ(Step3~7)

🔵準備フェーズ(Step3~7)

Step3 発起人会(準備会)の開催

Step4 定款の作成

Step5 事業計画書の作成

Step6 収支予算書の作成

Step7 設立総会(社員総会)の開催

ゆうき:「準備フェーズでは、会合と書類の作成が中心になるんですね。」

いち;「はい、発起人会設立総会などの会合、そして定款事業計画書収支予算書といった資料作成が“準備フェーズ”に含まれます。
そして、この資料の完成度が、NPO法人の設立認証を受けられるかどうかを大きく左右するんです。」

ゆうき:「事業計画書も、NPO法人では設立手順に含まれているんですか。」

いち:「株式会社設立時にも定款や事業計画書は作成しますが、事業計画書は義務ではありませんでしたね。
事業計画書、収支予算書とふたつ手順が増えています。

それに、定款や事業計画書、収支予算書全てにおいて、会社設立時以上の正確性や具体性、各書類の整合性が求められるので注意が必要です。」

Step3 発起人会(準備会)の開催

いち:「まずは、設立メンバーで、発起人会(準備会)を開催します。
ここで、NPO法人設立の賛意を確認し、設立趣旨書を作成します。
設立趣旨書とは、「なぜこの法人を設立するのか」「どんな社会的課題を解決したいのか」などを具体的に記し、法人の理念や背景を示す書類です。
加えて、定款、事業計画書、収支予算書の草案作成を行います。」

出席者:設立メンバー(発起人)

発起人会で協議する内容は以下のとおりです。
1 活動目的・社会課題・設立の必要性の確認
2 設立趣旨書の作成(発起人全員の同意が必要なため、この段階で作成しておくのが望ましい)
3 定款案、事業計画書案、収支予算書案を作成する。

※設立趣旨書は、NPO法人設立認証申請の必要書類です。

設立趣旨書の書き方

設立趣旨書は、NPO法人設立認証申請書類の中でも審査の重要ポイントとなる書類です。
行政が、「なぜこの団体を認証すべきか」を判断する材料になるため、読み手(審査担当者)に伝わりやすく、客観性のある内容が求められます。
行政担当者は必ずしも専門分野の知識を持っていないため、専門用語や略語は避け、一般的な言葉で説明することが重要です。

以下の5つの内容を含めて、A4用紙1〜3枚程度(自治体によっては枚数指定がある場合も)を目安に、一つの文章にして作成します。
定款の目的条項や事業計画との整合性が厳しくチェックされますので、一字一句レベルで定款の文言と合わせる必要があります。

①設立の目的・背景
▼社会課題や地域課題の現状、問題点をデータや事例を交えて説明し、なぜこの活動を始めるのかを明確に記載。
感情論よりも客観的事実を重視する。

②活動の必要性
▼既存の行政施策や他団体の活動では十分に対応できていない理由を示し、自分たちが取り組む意義を明確化。

③活動の内容
▼NPO法の特定非営利活動20分野に沿って、実際に行う事業・サービス・イベントなどを具体的に記載。
単なる理想や方針ではなく、実施可能性が伝わる具体性が必要。

④設立により期待される社会的効果
▼活動によって地域や社会がどのように改善されるか、将来像や成果をわかりやすく記述。
数値目標があると説得力が増します。

⑤NPO法人設立に至った経緯
▼設立メンバーの経験や活動歴、準備状況など、団体の信頼性が伝わるエピソードを簡潔にまとめます。

テンプレートはこちら(東京都生活文化局)

Step4 定款の作成

いち:「定款、事業計画書、収支報告書の作成は“Step”で分けていますが、関連性が高く、かつ内容と文言の整合性が求められるので、同時に作成をしてもいいと思います。
その際に、それぞれを別々の人が作成する場合は注意が必要です。
たたき台を一括作成してから、後に微調整というやり方がおすすめです。」

定款必須記載事項(NPO法第11条)

1 目的
2 名称
3 その行う特定非営利活動の種類及び当該特定非営利活動に係る事業の種類
4 主たる事務所及びその他の事務所の所在地
5 社員の資格の得喪(取得と喪失)に関する事項
6 役員に関する事項
7 会議に関する事項
8 資産に関する事項
9 会計に関する事項
10 事業年度
11 その他の事業を行う場合には、その種類その他当該その他の事業に関する事項
12 解散に関する事項
13 定款の変更に関する事項
14 公告の方法

NPO法人の定款は、株式会社とは違い、公証役場での認証は不要ですが、後述する設立総会で承認を得て設立当初の社員全員が正式な署名または記名押印します。

※定款は、NPO法人設立認証申請の必須書類です。

作成例はこちら(東京都生活文化局)

Step5 事業計画書の作成

事業計画書は、単なる活動予定表ではなく、目的を実現するための具体的な実行プランとして作成する必要があります。
特定非営利活動に係る事業(主事業)と、その他の事業(収益事業)は分けて記載しましょう。

※事業計画書は、NPO法人設立認証申請の必要書類です。

テンプレートはこちら(東京都生活文化局)

事業計画書の記載事項内容・注意点・記載例
事業の名称・概要定款に記載した「特定非営利活動の種類」に基づいた事業名を記載。
概要には「何を」「誰のために」「どのように」行うかを簡潔に示します。
例:子ども食堂運営事業/高齢者向け見守り事業 など
事業目的NPO法人の設立趣旨書・定款の目的条項と100%一致させる。
社会的課題や地域のニーズとの関連を明示し、公益性を示す。
例:「地域の高齢者の孤立防止と栄養改善を目的に、月2回の食事会を開催する。」
実施内容(具体的な活動計画)実施時期、回数、対象者、実施方法、スタッフ体制などを具体的に。
例:年12回(毎月1回)開催
参加対象は地域在住の小学生と保護者
1回あたり参加者20名、スタッフ5名で運営
実施場所会場名や所在地、借用方法(自前施設か、公共施設か)を記載。
人員計画事業に関わる理事・従業員・ボランティアの役割や人数。
有償スタッフがいる場合は勤務時間・報酬の有無を明記。
収支計画(事業ごとの概算)この事業にかかる主な収入(会費・寄附・助成金・事業収入)と、支出(人件費・会場費・材料費)を記載。
年度計画と金額の裏付けを示すことが重要。

Step6 収支予算書の作成

収支予算書は、自治体ごとにテンプレートが指定されていることが多いので、必ず作成前に所轄庁(都道府県・政令市)の様式を確認してください。
違う様式で作成すると受理されない場合があります。

収支予算書は、設立初年度と翌年度の2事業年度分をあらかじめ作成します。
ただし、自治体によっては翌年度までの事業計画が不要な場合があります。(所轄庁の要項を確認しておく)

必ず書かなければならない内容は、以下になります。
①実施する具体的な事業(特定非営利活動に該当するものと収益事業を区別する。収益事業は法人税の納税が必要なため。)
②収入(会費・寄附金・補助金・助成金・事業収益など)と、支出の内訳。
見込みの数字であっても、具体性と正確さが求められます。

※収支予算書は、NPO法人設立認証申請の必要書類です。

テンプレートはこちら(東京都生活文化局)

Step7 設立総会を開催

いち:「定款、事業計画書、収支予算書がそろったのち、設立総会を開催し、法人設立を正式に決定します。」

出席者:社員(NPO法人では、発起人=設立時社員であることが多いが、必ずしも一致しなくてよい)

ここで協議する内容は以下のとおりです。
1 理事および監事の選任
2 代表理事の選任
3 定款の承認(理事が署名)
4 設立趣旨書・事業計画書・収支予算書の承認

※設立総会の議事録(条文では、設立についての意思の決定を証する議事録の謄本)は、
NPO法人設立認証申請の
必要書類です。

設立総会議事録の記載項目内容
会議名例:「特定非営利活動法人○○設立総会 議事録」
開催日時・場所西暦・和暦いずれも可。
出席者正会員(発起人)全員の氏名と人数。委任状出席の場合はその旨を記載。
議事内容1 法人設立の決議
2 定款の承認
3 役員(理事・監事)の選任
4 主たる事務所所在地
5 設立代表者の選定
この5つを必ず盛り込むこと。
決議方法例:「出席正会員〇名中〇名の賛成により可決」など、賛否の結果を明示。
署名(自筆が原則)押印議長や議事録署名人2名以上の署名押印が必要になる場合が多い(定款の定めによる)を記載し、押印。

テンプレートはこちら(東京都生活文化局)

まとめ|余計な人的トラブルを生まないために

いち:「社員総会(設立総会)は、株式会社の株主総会にあたります。
つまり、社員総会がNPO法人の最高意思決定機関になる、ということになりますね。
理事は社員を兼ねているので、むやみに理事を増やすと意思決定が難しくなる等の弊害がある場合があります。
“役員構成は最低限で”とまではいいませんが、人数は慎重に検討することをおすすめします。」

ゆうき:「たしかに。偉い人が多くて組織がうまくまとまるとは思えませんね。」

いち:「役職者が多いと責任の所在があいまいになりやすいんです。
理事は、実際に業務を執行する人ですから、人数が増えると調整や合意形成に時間がかかります。
一方、規模に対して少なすぎると業務が偏ったり、監督機能が弱まるリスクもありますから、少なければいいというものでもありません。」

ゆうき:「なるほど…。バランスが大事なんですね。」

いち:「はい。特にNPO法人の場合は“活動への熱意”で参加している方が多いので、ときに意見がぶつかることがあります。
理事や監事をお願いする際には、のちのトラブル防止のためにも、役割や責任をしっかり説明して納得してもらうことが大切です。」

ゆうき:「思いが強い人が集まると方向性の違いでぶつかってしまいそうですね…。
でも避けられないトラブルでもありますよね、実際トラブルになったときはどうすればいいんですか?」

いち:「意見のぶつかり合いは必ずしも悪いものではありませんが、遺恨を残してしまってはよくありませんよね!
そんな時は、改めて共通の目的を確認することです。
NPO法人は利益追求ではなく、社会的な課題解決を目指す組織ですから、その原点に立ち返ると意見が整理しやすいのではないでしょうか。
同じ理念をもって集まった仲間ですから効果はあると思いますよ。」

ゆうき:「なるほど。感情論ではなく、なぜこの活動をやるのかに立ち戻ればいいんですね。」

いち:「とはいえ、組織を運営していく上で、人間関係のトラブルは避けられない部分もあります。
あらかじめ、“役割分担”や“意思決定のルール”を定款や規程で明確にしておくことも重要ですね。
きちんとしたルールがあれば衝突の抑止になると思いますし、解決もしやすいでしょう。

では次回は、申請・認証フェーズ(Step8~10))を解説します。
次回の申請・認証フェーズを乗り越えれば、いよいよNPO法人の設立となります。」


※この記事は、2025年10月時点での東京都の様式をもとに作成をしています。
各都道府県や政令市等の所轄庁によっては、指定書式や要件が異なる場合があります。
大きな違いはないと思われますが、必ず所轄庁のHPで最新情報を確認してください。

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