労働契約を締結 -はじめての雇用編3-

登場人物紹介

いち
行政書士事務所所長の行政書士
かなえ
起業の夢を無事かなえたWEBデザイン会社経営の女性 ー会社設立編はこちら

※文中の赤文字は専門用語です

step3.労働契約の締結|雇用・労働契約を結ぶときに必要なこと

かなえ:「step3の労働契約の締結って、具体的にどんなことをすればいいんでしょうか?」

いち:「雇用の条件が決まったら、いよいよ労働契約を結びます。
今回は、この時に必要な書類や注意点についてお話ししましょう。」

労働契約の前に準備すべき書類と確認事項

いち:「労働契約では、あらかじめ定めた労働条件をもとにして労働者と会社との間で正式な合意をします。
この時に必要になるのが、以下の4つの書類です。」

労働条件通知書・雇用契約書|違いと使い方

いち:「まず必須なのが、前回詳しく説明した労働条件通知書です。
これは労働基準法で交付が義務づけられている唯一の書類で、従業員に明示する義務があります。
また法律で義務づけられているものではありませんが、雇用契約書も用意しておきましょう。

労働条件通知書は会社が労働者に一方的に交付する義務があるもので、雇用契約書は労使双方が署名し、合意の意思を明示する書面です。」

かなえ:「どちらも内容は同じようなものなんですか?」

いち:「はい、義務で一方的に交付するものと、任意で労使双方が署名ものとで、書類の趣旨は違いますが、同じようなものです。
雇用契約書は合意の証明になるので、トラブル防止のために両方作っておくことをおすすめします。」

誓約書|守秘義務を明確にする誓約書の検討

かなえ:「契約書以外にも、渡しておく書類はありますか?」

いち:「もしも会社の業務上の秘密がある場合は、誓約書で守秘義務を明記しておくと安心です。
誓約書をつくる目的は、情報漏洩の抑止と、法的責任を明確にするためです。

仮に従業員が秘密を洩らした場合、不正競争防止法違反として10年以下の懲役、2000万円以下の罰金が科される可能性があります。
また秘密漏洩によって会社に損害が生じた場合には不法行為に基づく損害賠償請求ができるようになります。」

かなえ:「けっこう重い罰則なんですね…!」

不正競争防止法とは(1994年5月施行)

企業の大事な情報や信用を守るために定められた法律です。
従業員にも適用されるので、誓約書などで事前にルールを確認しておくことが大切です。

身元保証書|トラブル時の備え

いち:「さらに、従業員が重大な損害を与えるようなリスクに備えて、身元保証書を用意する企業もあります。
身元保証書をつくる目的は、連帯保証人をつけてもらうことで、従業員が万が一会社に損害を与えた場合の支払いに備える、というものです。

保証人が複数いると、支払い不能のリスクが下がるので連帯保証人は複数付ける企業が多くあります。
また、連帯保証人は単なる保証人と違って従業員本人と同じ立場で、会社から直接請求が可能になります。」

かなえ:「連帯保証人は責任が重い分、気軽に引き受けられるものじゃないですよね…」

いち:「連帯保証人の生活すらを脅かしそうなリスクですからね。
ただし、2020年身元保証法の改正で、身元保証契約における損害賠償額の極度額(上限額)の定めが義務付けられているんです。
際限なく支払いを求められるわけではなくなったんですよ。」

労働契約・労働条件通知書で注意すべきポイントとは?

いち:「労働条件通知書にあいまいな記載や未記載の項目があると、後々トラブルになることもあります。」

かなえ:「ブラック企業って、こういうところから始まるんですよね…」

いち:「ブラック企業というレッテルを張られると会社にとっては相当大きなダメージですね。
気軽に他人がSNSで発信できる時代ですから一夜にして会社の信用がなくなってしまうケースもあります。」

まとめ|信頼関係のスタートはここから

かなえ:「こうして話を聞くと、労働契約ってただの形式じゃなくて、会社と従業員、どちらを守るためにも大切なことなんですね。」

いち:「はい、労働契約書に始まるそれぞれの書類は、信頼関係を支えるために必要なものなんです。
だからこそ、一枚に正確さやどれだけの従業員への気持ちを込められるかが、後々のトラブル回避につながるんです。」

かなえ:「会社や仕事って人と人の関係ですもんね。
お互いが安心してスタートできるように、労働契約はしっかり準備しようと思います。」

いち:「その心構えがあれば大丈夫です。
ルールを整えた上で信頼関係を築いていく、それが重要だと思いますよ。

次回はstep4. 社会保険等の届け出・必要書類を説明します。」

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