登場人物紹介
いち
行政書士事務所所長の行政書士
かなえ
起業の夢を無事かなえたWEBデザイン会社経営の女性 ー会社設立編はこちら-
step3.労働契約の締結|雇用・労働契約を結ぶときに必要なこと
かなえ:「今回は、step3の労働契約の締結ですね。」
いち:「雇用が決まったら、いよいよ労働契約を結びます。
今回は、その際に必要な書類や注意点について説明しましょう。」
労働契約の前に準備すべき書類と確認事項
いち:「労働契約では、あらかじめ定めた労働条件を基に労働者と会社との間で正式な合意をします。
この時に必要になるのが、以下の書類です。」
労働契約の際に用意する書類
1 労働条件通知書・雇用契約書
2 誓約書
3 身元保証書
1.労働条件通知書・雇用契約書|違いと使い方
いち:「必須なのが、前回説明した労働条件通知書です。
これは労働基準法で交付が義務づけられている唯一の書類で、従業員に明示する義務があります。
同時に、雇用契約書も用意しておきましょう。」
・労働条件通知書は、会社が契約内容を労働者に一方的に交付する義務がある書面
・雇用契約書は、契約内容を確認して、労使双方が署名し、合意の意思を明示する書面
かなえ:「どちらも労働条件を確認するものなんですね、同じような内容なんですか?」
いち:「はい、義務で一方的に交付するものと、任意で労使双方が署名ものとで、書面の趣旨は違いますが、同じような内容です。
雇用契約書は、法律で義務づけられているものではありませんが、雇用契約書は合意の証明になるものなので、トラブル防止のために両方作っておくことをおすすめします。」
3.誓約書|守秘義務を明確にする誓約書の検討
いち:「会社の業務上の秘密を守りたい場合は、誓約書で守秘義務を明記しておくと安心です。
誓約書をつくる目的は、情報漏洩の抑止と、法的責任を明確にするためです。
仮に従業員が秘密を洩らした場合、不正競争防止法違反として10年以下の懲役、2000万円以下の罰金が科される可能性があります。
また秘密漏洩によって会社に損害が生じた場合には、不法行為に基づく損害賠償請求がしやすくなります。」
かなえ:「作っておけば、トラブルの際の対応がいくらか楽になりそうですね。
在職中に会社の書類を持ち出して、再就職先で利用したなんてニュースがたまにありますけど、けっこう重い罰則になるんですね。」
いち:「そのケースでは、誓約書がなくても罪に問われる可能性がありますが、誓約書があれば罪に問いやすくなります。
書類の持ち出しやコピーなんて、在職していたら見とがめらず気軽にできそうなことではありますけど、大変大きなリスクがあるんですよ。」
4.身元保証書|トラブル時の備え
いち:「従業員が重大な損害を与えるリスクに備えて、身元保証書(身元保証契約)を求める企業もあります。
理由は、連帯保証人に損害賠償義務を負ってもらうことで、本人の、支払い不能リスクに備えるためです。
慣例として、連帯保証人を2名以上お願いする会社もありますが、法律で人数が決まっているわけではありません。
連帯保証人には従業員本人に先だって会社が直接請求できる権利があるため、連帯保証契約は非常に重い責任になります。」
かなえ:「連帯保証人は気軽に引き受けられる立場じゃないですね。
家族や親せきに頼まれたら断れなさそうなので心配です。」
いち:「ただし、身元保証契約は、通常は従業員の故意または重大な過失による損害に限って有効なので、よほど悪質な行為じゃないと適用されない可能性が高いです。
また、契約期間は最長5年(更新可)に制限されているので、契約は無期限には続けられません。」
かなえ:「それなら頼まれても安心できますね。少しホッとしました。」
いち:「それに、2020年4月の民法改正で、身元保証契約では極度額(上限額)を定めないと契約自体が無効になり、無制限に請求されることはなくなったんです(民法465条の2)。」
まとめ|信頼関係のスタートはここから
かなえ:「こうして話を聞いていると、労働契約ってただの形式じゃなくて、会社と従業員、どちらを守るためにも必要なんだと気がつきますね。」
いち:「その通りです。労働契約書に始まるそれぞれの書類は、信頼関係を支えるために必要なものなんです。
だからこそ、一枚に正確さやどれだけの従業員への気持ちを込められるかが、後々のトラブル回避につながるんですよ。」
かなえ:「会社や仕事って人と人の関係ですもんね。
お互いが安心してスタートできるように、労働契約はしっかり準備したほうがいいということなんですね。」
いち:「その理解があれば大丈夫です!
次回は、step4. 社会保険等の届け出・必要書類を説明しましょう!
社員に安心して働く為にとても重要な内容になっているんです。」