開業資金が足りない!創業前に知っておきたいお金の集め方 -ゼロからの事業計画編2-

登場人物紹介

いち
行政書士事務所所長の行政書士
ゆうき
大学生。会社設立編はじめての雇用編の相談者かなえの弟。
事業を始めたいと漠然と考えている。

※文中の赤文字は専門用語です

創業資金の集め方|自己資金・融資・補助金の実態とは

ゆうき:「今回は開業資金についてのお話でしたね。
前回の説明を聞いて、起業に向かってやるべきことは見えてきたんですけど…
お金がないので、起業の夢が実現するまでは何年もかかりそうだなって思っていたんです。」

いち:「そうですね、それも一つの現実であることは間違いがありません。
お姉さんのように、仕事をしてお金を貯めて自己資金で起業をするのは理想ですし、多くの起業家の主流な事業の始め方でもあります。

データもありまして、日本政策金融公庫の“2024年度起業と起業意識に関する調査”によると、起業家の64.5%が、『起業費用を100%自己資金でまかなった』と回答しています。
また『起業時に金融機関からの借入しなかった』と回答した起業家では、その割合は79.8%にもなります。」

ゆうき:「自己資金で創業する人はそんなにいるんですね…
大学を卒業したらすぐにでも始めたい気持ちがあるんですが、やっぱり難しそうですね。」

いち:「でも、あきらめるのはまだ早いのかもしれませんよ?
少数派ではありますが、100%自己資金なしで起業した人の割合は9.9%ありますし、自己資金が0から50%未満で起業した人の割合は28.1%です。」

ゆうき:「改めて考えると多いともいえる数字かもしれませんね。」

いち:「ではこの方々はどうやって資金を集めているのでしょうか?
今回のお話は、自己資金以外の資金調達方法にスポットライトを当ててみましょう。」

親族から創業資金を借りるメリット・注意点

ゆうき:「開業資金を集める方法ですか…
僕には家族から借りるくらいしか思いつきません。」

いち:「第一は、まさにそれです。
資金集めをする際には親族からの借り入れを初めに考えた方がいいと思います。」

ゆうき:「…え?」

いち:「当然、親族に金銭的な余裕がある場合に限られますが、親族からの借り入れは金額の融通がきいたり、長期の返済が認めてもらえたり、利子を取られない場合もあります
第三者からの借り入れに比べたらとても有利な条件で借りやすいです。」

ゆうき:「そういわれてみれば確かに…メリットが大きいですね。」

いち:「またお金の不安は、想像以上に精神的負担になります。
実際、プレッシャーに耐えきれず、事業をあきらめる人も少なくありません。
心理的な負担も少なく借りることができるので借り入れる先としては理想的です。

ただし、これは借りる側からの一方的な見かたです。
その後の態度いかんによっては、人間関係を壊しかねないので誠意ある対応が大切ですよ!」

起業に使える補助金・助成金の違いと探し方

いち:「国や自治体から資金を融通してもらう方法、補助金助成金もおすすめです。」

ゆうき:「国や自治体からお金がもらえるんですね、それは魅力的ですね。
ところで補助金を助成金の違いって何ですか?」

いち:「定義があやふやになっている部分もあるのですが、主に、補助金の管轄は経済産業省が、助成金は厚生労働省が管轄しています。

補助金は事業の立ち上げ、研究開発、設備投資など、様々な目的に交付されます。
以下のような特徴があります。」

補助金の特徴
・申請の期間が限定されている
・事業内容の審査がある
・枠が限られているのでの奪い合いがある
・申請すれば必ずもらえるものではない

ゆうき:「補助金は、欲しいからといって必ずしももらえるものじゃないんですね…
でも交付に厳しい条件があるのなら、補助金をもらえれば国に事業のお墨付きをもらっている優良企業ってイメージが付きそうですね。」

いち:「確かにそうですね。
補助金を受け取った企業でのちに発展しているところも多いんですよ。
ニワトリが先か卵が先かって話にもなりますけど。」

ゆうき:「それに、国や地方は税金を使ってまで事業を発展させたいんですよね?
補助金を調べてみるだけでも事業のヒントが得られそうです。」

いち:「いいアイデアです、だんだん考え方が起業家に近づいていますね。

では、次は助成金の説明をしましょう。
助成金は、雇用維持、労働環境改善、人材育成など、雇用関連の目的で交付されます。
特徴は以下になります。

助成金の特徴
随時募集をしているケースが多い
要件を満たせば原則誰でも受給できる

ゆうき:「なるほど、内容が厚労省のイメージ通りです。
誰でも受給できるのはいいですね。」

いち:「要件を満たせばという条件が付きますけどね、その通りです。
最後に助成金や補助金を検討する際の注意点ですが、事業用途が指定されているものがほとんどで、開業の自己資金が一定額ないと受けることができないことが多いです。

事業内容や現在の環境と合致するものがあればぜひ利用したいものですね。
J・Net21 ミラサポpuls など、補助金や助成金のまとめサイトがありますので一度見ていたらいかがでしょうか?」

ゆうき:「事業のヒントにもなるかもしれませんしね、必ず見てみます!」

「【補助金と助成金】起業に使える制度の違い比較一覧表

項目補助金助成金
管轄省庁経済産業省厚生労働省
目的事業立ち上げ、研究開発、設備投資など雇用維持、労働環境改善、人材育成など
申請受付期間限定の募集が多い随時募集のケースが多い
審査・競争審査あり、採択枠の奪い合い審査なし
(条件を満たせば原則受給可)
支給条件事業内容が審査により決定制度の要件を満たすこと
受給の確実性申請しても必ずもらえるわけではない原則もらえる
用途の自由度使途はある程度自由
(条件付き)
用途が明確に限定される

起業時の借り入れ先比較|日本政策金融公庫や信用金庫の特徴とは

ゆうき:「そういえば、金融機関からの借り入れも資金調達の王道ですよね。」

いち:「はい、金融機関からの借り入れは資金調達の王道ですね。
一般的に金融機関の融資難易度は、1都市銀行 、2地方銀行、3信用金庫の順番に下がります。」

ゆうき:「信用金庫が比較的借りやすいんですね。
信用金庫はあまりなじみがありませんけど、名前だけは知っています。」

いち:「信用金庫は主に地域の中小企業や個人を支援することを目的としている非営利の金融機関です。
基本的には、預金ができたり融資を受けられる人は会員のみで、会員には地域の住民や事業者がなることができます。
そもそもの存在目的が中小企業や個人を支援することなので、他と比べて融資の難易度が低いんですよ。」

ゆうき:「それは嬉しいですね。
では融資を受けたいのならば、地元の信用金庫の会員になって融資を申し込むのが一番よい、ということになるんでしょうか?」

いち:「それも選択肢の一つですけど、もっといい融資の申し込み先があります。」

ゆうき:「ぜひ聞きたいです!」

いち:「政府系機関である“日本政策金融公庫”です。
日本政策金融公庫は積極的な創業支援を行っていて、実績がない創業者にも融資のハードルが低いです。
資金集めの際には、親族の次に検討すべきところだと思います。

様々なところで頻繁に無料の事業セミナーや融資相談会を行っていますので参加をしてみたらいかがでしょう?
地域の図書館などでもたまに融資相談会を開催していますよ。」

ゆうき:「興味があります。
起業が具体的に決まっていなくても、セミナーや融資相談会に参加してもいいんですか?」

いち:「はい、問題ありません。
日本政策金融公庫のセミナーは創業をする際の勉強になることが多いので、一度は参加してみることをおすすめします。」

商工会議所で起業相談をしたら、日本政策金融公庫の金利が安くなる?

いち:「日本政策金融公庫で融資を受ける前にやっておいた方がいいことがあります。
それは、地元の商工会議所や商工会で創業相談をしてみることです。」

ゆうき:「商工会議所に行くだけで何か変わるんですか?」

いち:「実は、商工会議所の経営指導を受けることで、マル経融資(小規模事業者経営改善資金)という、通常よりも低金利で融資を受けられる制度の対象になれる可能性があるんです。」

ゆうき:「低金利って、どのくらいなんですか?」

いち:「時期や制度改正にもよりますが、おおむね1~2%台の金利で借りられることが多いです。
さらに、無担保・無保証人でもOKということもあり、創業まもない人にはとても有利な制度なんですよ。」

ゆうき:「それはすごいですね!でも誰でも使える制度なんですか?」

いち:「この融資を利用するには、“商工会議所で6か月以上の経営指導を受ける”という条件があります。
この条件は、いずれ起業したいという段階の起業家には、ある意味とてもいい条件ともいえますね。」

ゆうき:「たしかに!タイミングを見計らって行っておいた方がよさそうですね。」

いち:「相談は無料ですし、創業前からサポートしてくれるパートナーを得る意味でも通う意味は大きいですよ。」

クラウドファンディングやスポンサーで資金調達する?

ゆうき:「親族、補助金助成金、金融機関からの借り入れ、と伺ってきましたが、さすがにもうありませんよね?」

いち:「主要な資金調達手段はその三つですが、他にも考えられる手段があります。
難易度は上がりますけれど、個人スポンサーを見つける方法と、クラウドファンディングが考えられます。
ただしスポンサーは、起業する業界や人的ネットワークに左右されるので、現実的には難しい手段なのかもしれませんね。」

ゆうき:「たしかに、学生には難易度が高そうです。
スポンサー探しは動画チャンネルでコンテンツの一つになっていたりしますけど…あれも現実的な選択肢ではありませんよね。」

いち:「この二つは緻密な事業計画があったうえで、感情に訴えるものや運がなければ融資を集めるのは大変だと思います。
それに、常に事業の監視をされる立場になりますから、プレッシャーも相当なものになるのではないでしょうか。」

ゆうき:「事業内容にもよるんでしょうけど…、スポンサー探しと比べたらクラウドファンディングはなんとかなりそうなイメージがありますね。」

いち:「クラウドファンディングは、見返りが必要のない型式のものもあります。
国内大手のCampfireMakuakeなどのクラウドファンディングのウェブサイトをのぞいてみてもいいかもしれませんね。」

起業前に知っておくべき資金調達のまとめ

ゆうき:「今回のお話をまとめると、こんな感じでしょうか?」

多くの起業家は自己資金だけでスタートしている

融資や補助金等も有力な選択肢

目的や状況に応じて、最適な調達方法を選ぶ

いち:「その通りです。
ゆうき君もより良いスタート方法が見つけられるといいですね!

次回で事業計画のお話しは最後です。
事業を形にする計画つくり、創業計画書(事業計画書)についてお話しをしましょう。」

起業時に使える資金調達方法の比較一覧表

資金調達方法メリットデメリット
親族からの借入柔軟な条件、心理的な安心感人間関係に影響が出る可能性
補助金返済不要、公的信頼度が高い審査あり・採択率が低い
助成金要件を満たせば原則受給可用途が限定されている
公庫融資創業支援に強い、低金利審査に準備が必要
クラウドファンディング広告効果あり、応援されやすいストーリー性や見せ方が重要
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