創業計画書(事業計画書)はなぜ必要?起業に向けた準備の第一歩 -ゼロからの事業計画編3-

登場人物紹介

いち
行政書士事務所所長の行政書士
ゆうき
大学生。会社設立編はじめての雇用編の相談者かなえの弟。
事業を始めたいと漠然と考えている。

※文中の赤文字は専門用語です

創業計画書(事業計画書)とは?起業前に知っておきたい基本と目的

いち:「最終回の今回は、やりたいことが決まって、実際に事業の準備を始めるまでに、具体的にやっておいた方がいいことをお話ししましょう。」

ゆうき:「具体的にやっておいた方がいいこと?それは気が引き締まりますね。」

いち:「今回は、頭の中に漠然と生まれたプランを一つのかたちにする方法をお話しします。
ビジネスプランの計画表づくり、創業計画書(事業計画書)の説明をします。」

ゆうき:「創業計画書?事業計画書ともいうんですね。」

いち:「創業計画書と事業計画書は、ほぼ同じ意味で使われているんです。
以下のような一枚の書面になっているんですよ。

「創業計画書」と「事業計画書」の違いは?

基本的にはほぼ同じ意味で使われることが多いですが、創業時に特化している場合は「創業計画書」、事業全般の計画では「事業計画書」と呼ばれることがあります。
この記事では日本政策金融公庫の書式に合わせ「創業計画書」を中心に解説しています。

創業計画書サンプル ※日本政策金融公庫のテンプレートへのリンクあり

創業計画書の役割とは?自分と他人に伝えるために必要な理由

いち:「これからのお話は創業計画書を見ながらの方が分かりやすいと思います。
良かったらご用意ください。」

ゆうき:「分かりました。」

いち:「では始めますね、この創業計画書をつくる目的は、二つあります。」

1.自分のため

いち:「まずは第一に、“自分のため”です。
事業を見える化し、自分の頭の中の整理をするために作成します。
いわば“思考整理ツール”と考えてもいいでしょう。
作成することで、起業前の不安を減らし、行動に移しやすくする側面もあります。」

・自分の事業アイデアを明文化し、頭の中を整理できる
・目的や動機、ターゲット、商品内容、必要資金などを明確にする
・リスクや課題に事前に気づける
・将来的な事業の見直しや軌道修正の基準となる

2.他人に説明するため

いち:「第二に、“他人に事業の説明をするため”です。
出資や融資を頼む際に、何もなくしてお金を出す人はごく少数でしょう。
その際、創業計画書は、周囲の理解・協力・信用を得るためのツールになります。」

ゆうき:「出資や融資を得るためのツールですか。」

いち:「いわば、そのもとになる、計画性・実現性がある事業であることを伝えるプレゼン資料ですね。
この人はこんな経歴があって、これだけ真剣に事業の詳細を考えているのか、それならば…と考えてくれる人がでてくることが期待できます。」

・金融機関への融資申請で必須資料
・家族や共同創業者、協力者に計画を説明し、同意を得る
・支援者への信頼を高める
・スタッフやパートナーの確保、採用時にも活用できる

創業計画書があれば迷わない|起業時の方針を保つために

ゆうき:「ざっと内容をみてみましたが、結構難しそうですね……」

いち:「実際にやりたい事業がはっきりするまでは、白紙の創業計画書をみても何を書いたらいいのか分からないと思います。
でもやりたい事業がはっきりしていればどんどん書きたいことがあふれてくると思いますよ。」

ゆうき:「そうか、僕はまだやりたい事業がはっきりしていないから難しく見えるんですね。」

いち:「事業を始めると、思いどおりにいかないことがたくさん出てきます。
そんなときに、『自分は何のために、どんな計画で始めたのか』が書かれた創業計画書があると、ブレずに進みやすくなるんです。」

ゆうき:「事業の、目に見える原点にもなりそうですね。」

創業計画書の書き方と構成|日本政策金融公庫の書式で解説

創業計画書の基本構成

いち:「では創業計画書の中身を見ていきましょう。
主に次の4つの柱で成り立っています。」

今回は事業計画が決まっていない人向けのお話なので、詳細は述べずに概要をお話しします。
詳細が気になる方は日本政策金融公庫のこちらのウェブサイトがおすすめです。
創業計画書のテンプレートもあります。

1. 事業の概要(どんな事業を、なぜ始めるのか)
2. 取扱商品・サービス(何を売るのか、どう違うのか)
3. 販売・仕入・人員計画(お客さんへのアプローチや人の手配)
4. 資金計画・収支予測(お金の動きや利益見込み)

ゆうき:「なるほど。
作っているうちに事業全体を考えることになるんですね。
事業をやる意味を明確にして、その詳細をビジネスになるかという視点で、どんどん決めていくって感じですね。」

創業計画書の使い方|融資・説得・採用に役立つ

いち:「創業計画書は、金融機関への融資申請のときだけでなく、家族やパートナーへの説明にも役立ちます。
それにスタッフ雇用の際にも使えます。
今、自分はこういうことを考えていて、こんな形にしたいと思ってる、と計画書を見せながら話すと、相手も安心して協力をしてくれるんじゃないでしょうか。」

ゆうき:「それ、すごく大事かも…
身近な人ほど、ちゃんと説明しないと不安にさせちゃいますもんね。」

創業計画書は1枚から!初心者でも書ける起業準備の第一歩

いち:「最初は難しく考えずに、気軽なメモのつもりで書き出してみましょう。
最初から完璧に書こうとしなくて大丈夫です。
書き方は箇条書きでもOKですし、あとから見返してみておかしなところがあれば何度でも書き直したらいいです。

たった1枚の創業計画書を埋めることで、自然と『何をどう始めたいのか』が明確になっていきますよ。」

ゆうき:「たしかにこれは最初に話されていた、頭の中に漠然と生まれたプランをかたちする具体的な方法ですね。
気負わずに始めてみます。」

創業計画書(事業計画書)とは?まとめ|起業の軸を保つビジネスプランの指針

ゆうき:「いちさん、たくさんお話を聞かせていただいてありがとうございました!
頭の中がだいぶスッキリしました。
起業は計画性がないと失敗してしまいそうですね…ちゃんと計画を立ててみます。」

いち:「創業計画書や事業計画書は、法で定められた義務ではありませんが、作ると作らないとでは雲泥の差があります。
今後、道に迷っても帰ってこれるように計画書という“地図”をぜひ作ってみてくださいね。
学ぶ気持ちのあるゆうき君ならきっといいものを書けますよ!」

ゆうき:「ありがとうございます。
この一枚を書くことが、僕の起業のはじまりになる気がしてきました!」

いち:「ゆうき君がいつか起業をする時がきたらまた相談をして下さいね。
できる限りのことをさせてもらいますよ!」

ゆうき:「はい!その時はぜひお願いします。」

※参考資料:日本政策金融公庫『創業の手引き』『創業計画書記入の手引き』


事業計画編終わり。

事業計画編番外編はこちら

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