事業を始めたいけど個人事業と会社設立のどちらがいいの? -ひとり会社設立編1-

登場人物紹介

いち
行政書士事務所所長の行政書士
かなえ
起業の夢があるWEBデザインの会社に勤める30代女性
両親が相続の相談をしたことがきっかけでいちと知り合った

※文中の赤文字は専門用語です

かなえさんの起業

かなえ: 「こんにちは!今日はよろしくお願いします。」

いち:「こんにちは、かなえさん。お久しぶりですね!
会社設立のことでご相談って聞いて驚きました。
独立を決断されたんですね。」

かなえ:「はい!資金の目途が立ったので起業の準備を始めたいと思っているんです。
いちさん、相談にのっていただけませんか?」

いち: 「はい、起業のことならお役に立てると思います。
ところでかなえさんはどんな事業をしたいと考えているんですか?

かなえ: 「WEBデザインです。
WEBデザインの仕事はずっとやってきたんですが、会社勤めじゃなくて自分の責任でやっていきたいって、ずっと思っていて。

でもいざ起業の準備を始めようと思ったら、何から手をつけたらいいのか全然わからないんですよ…」

いち: 「何から手をつけたらいいのか分からないなんて最初はみんなそうだと思いますよ!
お役に立てるように私も頑張りますので一緒に少しずつ学んでいきましょう。

…では早速ですが、起業を決めたらまず考えなければならない事、まずはそこからお話しを始めましょう。」

個人事業と会社設立、どう選ぶ?

起業するとき最初に決めるべきこと

いち: 「個人事業として始めるか、それとも会社を設立するか。

これが起業を決めたときに、まず考えなくてはならないことです。」

かなえ: 「起業は会社をつくって始めるのが当たり前だと思っていました…
個人事業という始め方もあるんですね、それぞれの違いを教えていただけますか?」

個人事業の特徴と注意点

いち: 「今回は個人事業と会社の全体像をざっくりとお話ししますね。
何となくで結構ですので、まずは全体像をつかんでみてください。」

かなえ:「はい、よろしくお願いします。」

いち:「まずは個人事業ですが、会社化をせずに、事業運営を始めるケースのほとんどは個人事業になります。

個人事業は開業の手続きが簡単ですし、設立費用もほとんどかかりません。
税務署に開業届を出すだけで始められるので、事業を始めるまでのハードルが低いんです。
ただし一般的に会社と比べると個人事業の信用度は低いといわれています。」

かなえ: 「個人事業の信用度が低いといわれるのはなぜなんですか?」

いち: 「一般的に会社と比べて経営リスクが高いとみられるからです。
個人事業は経営者の健康で経営が左右される可能性がありますし、会社と比べて資金を集める手段が少ないんです。
そんな事情があって資金面において不安があると考えられがちなんですね。

また、会社は会社法を守らなければいけませんが、個人事業には会社法の適用がないものが多いため、コンプライアンスの面の管理も不安視されることがあります。

こんな理由があって、個人事業主とは取引自体をしない企業も少なくないんですよ。」

会社法とは(2006年5月施行)

会社の設立方法、機関の仕組み(株主総会・取締役会など)、株式や資本金に関するルール、決算・会計・監査などの運営ルール、合併・分割・解散などの再編ルールなどに関するルールを定めた法律です。株式会社の規定が中心になっています。

かなえ: 「個人事業主とは取引をしない企業があるんですか…
それなら会社を設立する以外の選択肢はなさそうのも思えます。
やっぱり起業する方の多くは会社の設立を選ぶんですよね?」

起業家の多くはどちらを選んでいる?

いち: 「そう思ってしまう気持ちもよく分かります。
でも実態はそうとも言い切れないんですよ。

ではかなえさんと同じ様なケースの起業家が、個人事業主と会社設立のどちらの方を選択しているのか?
それがが分かる統計が経産省から発表されているので、そちらをみてみましょうか。」


かなえ: 「個人事業者の方が約6割ですか、意外です。
なぜなんでしょうか?」

いち: 「2025年現在、法人で始める方が増えている傾向にあるようですが、まだまだ個人事業で起業する方のほうが多いんです。

個人事業で始める多くの方が手続きの簡単さコストの低さを挙げています。
それに売上が一定額に満たない場合は個人事業の方が税金が安くなるということも大きな理由の一つでしょう。」

会社設立の特徴と注意点

かなえ: 「なるほど…税金が安くなるのは魅力的ですね…
個人事業のメリットやデメリットは何となく分かりました。
次に、会社にすることのメリットやデメリットも教えてもらえますか?」

いち:「はい、会社には、社会的信用が得やすい資金調達がしやすくなる事業拡大の際に有利になるなど、個人事業にはないメリットがあります。
ただし設立や維持に費用がかかり会計処理も個人事業より複雑になるんです。」

“法人成り”という選択肢も

かなえ:「なるほど…、個人事業と会社、どちらにも良い面とそうではない面があるんですね。
創業後の取引先にいくつかあてはあるんですが、最初はそこまで大きな売上は見込めないかもしれませんし…
でも、将来的に事業を拡大していくことも考えていて…うーん…、悩みますね。

そうだ!
売り上げが上がってきたら個人事業から会社に切り替える事は可能なんですか?

いち: 「はい、個人事業でスタートしたあと、売上や規模が大きくなってから会社(法人)を設立して、そちらに事業を引き継ぐことは可能です。

これは法人成りといわれていて、売上が上がったら会社化することは一般的によく行われていることなんです。」

かなえ: 「法人成り…そういう選択肢もあるんですね。
最初から会社として始めるべきか、それとも個人事業から始めるべきか、本当に悩んでしまいますね。」

いち: 「今回の説明だけではなかなか判断が難しいと思いますよ!

次回からは個人事業と会社との違いをもっと詳しく説明していきます。
それから結論を出してみたらいかがですか?」

かなえ:「そうします!次回もよろしくお願いします!」

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