雇用までの大まかな流れ「経営者が押さえる5つのステップ」 -はじめての雇用編2-

登場人物紹介

いち
行政書士事務所所長の行政書士
かなえ
起業の夢をかなえたWEBデザイン会社経営の女性 ー会社設立編はこちら

※文中の赤文字は用語です

人を雇うときの基本ステップと準備

かなえ:「前回のお話で、雇用の責任やリスク、費用などを聞いて、人を雇う前にはしっかりとした準備が必要なんだなと改めて感じました。
今回は一連の手順を教えていただけるんでしたね。」

いち:「はい、今回は実際に人を雇うときの全体の流れをステップごとに見ていきます。
全体像を知っておくと、やらなければならないことが明確になってきますよ。」

雇用の5つのステップ

かなえ:「会社の設立時に比べると手順はそれほど多くありませんね。」

いち:「それでは順を追って説明していきますね。
今回はstep1とstep2を説明します。

Step1:雇用前に必要な“労働条件”の整理

いち:「まずは労働条件をしっかり決めておくことが大前提です。
決める際には、厚生労働省労働条件通知書を活用すると漏れがなくて安心です。

労働条件通知書労働基準法で従業員に明示する義務のある重要な書類ですのでその際の手間も省けるでしょう。
労働条件は、以下の内容を明確にしておく必要があります。」

労働条件通知書に必ず書く項目|絶対的明示事項

項目内容
① 労働契約の期間契約が有期の場合は期間や更新の有無、更新基準を記載
② 就業の場所・業務の内容どこで・どんな仕事をするのか明記
③ 始業・終業の時刻、休憩・休日等所定労働時間、休憩時間、休日、交替制の有無など
④ 賃金の決定・支払い方法基本給、手当、支給日、締日、控除など
⑤ 退職に関する事項解雇の事由や手続き、自己都合退職の扱いなど

必要に応じて記載する項目|相対的明示事項

項目内容
昇給昇給の有無や基準、実施時期
退職手当支給条件、計算方法など
賞与支給の有無、支給時期や計算基準
就業規則適用される就業規則の有無と名称
表彰・制裁懲戒規定や表彰制度など
安全衛生等災害補償、業務外の疾病補償、安全衛生の取組など

※2024年法改正で追加された記載ルール

項目内容対象
就業場所・業務の変更範囲転勤や異動の可能性がある範囲を記載すべての労働者
有期契約の更新上限更新の有無、更新回数、通算契約期間など有期契約労働者
無期転換申込機会と条件無期転換の申込時期と転換後の労働条件有期契約労働者

かなえ:「なるほど、これはちゃんと決めておかないと後々トラブルにもなりかねませんね。」

いち:「その通りです。
トラブル回避のためにもしっかりと決めておきましょう。」

労働条件通知書サンプル(表面)
(裏面)

時間外労働に必要な“36(サブロク)協定”

いち:「法定労働時間は原則一日8時間・週40時間までなのはごぞんじですよね。
そして時間外労働の上限は、原則月45時間、年360時間までなのですが、実際はこれを超える労働をさせることも可能です。
ただしその場合には、従業員と書面で合意し、労働基準監督署に届け出る必要があります。

これを36(サブロク)協定といいます。」

かなえ:「サブロク協定は聞いたことがありますね、届け出れば働かせても良いってことなんですか…?」

いち:「本来は違法となる時間外労働について、36協定を結ぶことで罰則の適用を免れるという仕組みです。
しかしもちろん限度はあります。」

Step2:従業員の募集・選定|募集方法と面接のポイント

かなえ:「募集って、どこから始めればいいんでしょうか?」

いち:「方法はいくつかあります。
ハローワーク、求人サイト、SNS、知人からの紹介など、会社の規模や希望条件によって選びます。

募集をかける際は、職業安定法などの法律に違反しないように、虚偽表示や差別的表現は避けましょう。
また、面接時の質問にも配慮が必要です。」

職業安定法とは(1947年11月施行)

求人募集や採用に関するルールを定めた法律で、求職者の適正な雇用機会を守ることを目的としています。
虚偽の求人広告や差別的な表現(性別・年齢・家族構成など)は禁止されており、公正な採用活動を企業に義務づけています。ハローワークや求人サイトもこの法律に基づいて運営されています。

採用面接で気をつけること

かなえ:「性別とか家族構成とか、聞いちゃいけないって聞いたことがあります。」

いち:「はい、そのとおりです。
面接では、応募者のスキルや意欲が会社の求める人材と合っているかを見極める必要があります。
ただし、応募者の適性や能力に関係ないことは原則聞いてはいけません。」

かなえ:「面接官がこのルールを理解していなくて、SNSで書かれてしまって問題になっている記事をたまに見かけますね。」

いち:「そうですね、会社側も面接官にきちんと指導をする必要があると思います。
会社の信用を落とすことにもつながりますからね。」

かなえ:「はい、前回で挙げられた雇用のリスクの一つですね。
それにしても人って印象だけで判断しがちですが…面接って難しいですよね。」

いち:「大切なのは、多面的な質問基準の明確化
採用基準をあらかじめ整理しておくことが大切ですね。
感覚に頼らず、会社が求める能力とマッチするかを軸に判断するといいですよ。」

かなえ:「分かりました。
多面的な質問と基準の明確化、これを第一に考えてみます。」

いち:「短時間での人の見極めはとても難しいと思いますが、先入観や思い込みで決めつけずに客観的に判断することがとても重要になってきますね。

では次回は、step3の労働契約の締結について、より具体的に解説していきましょう!」

かなえ:「はい、よろしくお願いします!」

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