会社の主な種類とそれぞれの特徴
いち:「前回は、個人事業についてお話をしました。
今回は会社設立の説明です。
会社設立の説明は長くなりますので、前編後編に分けてお話しをしましょう。」
かなえ:「はい、よろしくおねがいします!」
いち:「会社には様々な種類があって、それぞれに特徴があります。
会社設立を考える前提として押さえておいた方がいいことですので、前編では“会社の種類”を説明したいと思います。」
株式会社とは?|基本的な特徴
株式会社は、日本で最も一般的な会社形態です。(2024年時点で会社全体の80%以上)
株式を発行して出資を受け、その資金をもとに事業を運営します。
株式を発行できるのは株式会社だけです。
通常、株式には“議決権”があり、株主は株主総会を通じて経営方針に参加することができます。
原則として1株につき1議決権が与えられるため、多くの株式を所有する株主ほど経営に対する影響力が大きくなります。
※会社によっては議決権のない“無議決権株式”を発行することも可能です。
また、株式を上場すると、広く一般の投資家から資金を集めることができ、融資に頼らない資金調達が期待できます。
ただし、上場には厳しい審査や情報開示の義務などが伴うため、経営の自由度が制限される側面もあります。
有限会社とは?|現状と特例有限会社について
有限会社は、2025年現在でも見かけることがありますが、2006年5月1日の会社法施行により新たに設立することはできなくなりました。
会社法施行以降は、有限会社を新設できません。
会社法施行前に設立された有限会社は、現在も“特例有限会社”として存続しています。
商号はそのまま“有限会社○○”を名乗ることができ、法律上は株式会社の一種として扱われます。
特例有限会社は、株式譲渡制限会社(非公開会社)と同様の簡易な運営が認められており、取締役会や監査役の設置義務など、一部の株式会社に課される手続が省略されています。
持分会社とは?|合名会社・合資会社・合同会社の特徴
いち: 「会社法施行で、会社制度の複雑さを解消し、より柔軟で透明性の高い企業活動を促進するために、有限会社制度が廃止され、株式会社と持分会社に整理されました。」
持分会社とは、合名会社・合資会社・合同会社の三つを総称したものです。
持分会社では、出資者(社員)が自ら経営に関与できる仕組みのため、意思決定が早く、柔軟な経営がしやすいという特徴があります。
また、株式会社のような定款認証や複雑な設立手続きが不要なため、設立が比較的容易で、費用も安く抑えられます。
このうち合同会社は、アメリカのLLC(Limited Liability Company)をモデルに2006年の会社法施行時に導入されたもので、日本版LLCとも呼ばれます。
合同会社(LLC)のメリットと実例
かなえ:「持分会社というのはあまりなじみがありませんね、初めて聞きました。」
いち:「実は、Apple JapanやAmazon Japanなど、誰もが知るようなグローバル企業の日本法人も持分会社である合同会社として設立されているんですよ。
合同会社は、一般からの資金調達の必要性が低い巨大企業にとっては、株主の意向に縛られず、機関設計が自由にできる等、自由度やコスト面のメリットが大きい会社形態なんです。」
かなえ:「気がついていなかっただけで意外と身近にあったんですね。
Appleなどの巨大企業があえて、株式会社ではなく合同会社を選んでいるというのが興味深いです。」
持分会社の責任範囲とは?|無限責任と有限責任の違い
かなえ:「身近な商品やサービスにも会社の仕組みが影響していると思うと、会社についてもっと知りたくなりますね。
ところで、持分会社って3つあるんですよね…合名会社、合資会社、合同会社と。
持分会社それぞれの違いを教えていただけますか?」
いち: 「持分会社の違いは、出資者の責任の範囲です。」
| 持分会社名 | 社員構成 |
|---|---|
| 合名会社 | 無限責任社員 |
| 合資会社 | 無限責任社員+有限責任社員 |
| 合同会社 | 有限責任社員 |
※社員とは会社法上の用語で、会社の従業員ではなくて、出資者のことをいいます。
かなえ: 「責任とはどういう意味なんですか?」
いち: 「無限責任社員は、会社の借金や損失を会社の資産だけで返済できないときに、自分の財産を使ってでも全額を返さなければならないんです。
これは、事業が失敗したときに負債を返済できなければ、個人で自己破産をする可能性があるということでもあります。
一方、有限責任社員は、原則出資した範囲内での返済で済みます。
有限責任社員で構成されている株式会社や合同会社は、法律上は個人で大きな負債をかかえることがありませんので、失敗をしても再挑戦しやすい仕組みだと言われています。」
かなえ: 「なるほど、負債のリスクが限定的なのは安心します。
それにしても有限責任で始められるのなら、わざわざ無限責任の会社を選ぶ必要はないようにも思えますね。」
いち: 「はい、実際に持分会社の約90%が合同会社なんです。
ただし注意が必要なのは、法律上は有限責任であっても、実際に金融機関から資金を借りるときには、経営者が会社の連帯保証人になるよう求められることが多いという点です。
この場合は会社の借金ではなく、経営者個人の借金となるため、当然ながら個人としての返済義務が生じます。」
かなえ:「何だかうまくできているんですね、そうそう甘い話はないってことはよく分かりました。」
主要会社形態の比較一覧表|信用度や融資の受けやすさなど
いち:「ここで一旦、会社の特徴を整理しておきましょう。」
| 会社形態 | 設立費用 | 信用度 | 経営の柔軟性 | 出資者の責任 | 融資の受けやすさ |
|---|---|---|---|---|---|
| 株式会社 | やや高い | 高い | 低め | 有限 | ◎ |
| 合同会社 | 安い | 高い | 高い | 有限 | ○ |
| 合名会社 | 安い | 低い | 高い | 有限+無限 | △ |
| 合資会社 | 安い | 低い | 高い | 無限 | △ |
まとめ|株式会社と合同会社、どちらを選ぶべき?
いち:「会社の形態についての説明は以上です。
気にある“会社”はありましたか?」
かなえ:「はい、ひとくちに会社といっても色々あるんですね。
私は将来の事業の拡大を考えているので、信用があって資金集めがしやすい会社設立に気持ちが傾いています。
特に株式会社と合同会社が気になっているんですが…
信用を取るならば株式会社、設立費用の安さや手続きの容易さ、柔軟な経営を望むならば合同会社という理解で合ってますか?」
いち: 「はい、その考えで間違っていないと思います。
さらに付け加えると、一般的に、株式会社は持分会社に比べて融資が受けやすいといわれています。
将来の事業拡大を想定しているならば、より資金の融通がしやすい株式会社の方が都合がいいのかもしれません。」
かなえ: 「そうですね、一人で事業を始めるんですから、経営の柔軟性はそんなに気にする必要がありませんし、設立時の資金は用意ができています。
会社設立を選ぶならば、たしかに株式会社の方が私の考えに合っていると思います。
…株式会社についてもっと詳しく教えていただけませんか?」
いち:「かしこまりました。では株式会社についてもっと詳細な説明をしていきましょう!」

