株式会社設立のメリット・デメリットとは?
いち:「では会社設立とはどういうもの?後編を始めます。
会社設立のメリットとデメリットも説明をしましょう。」
株式会社にすると何がいい?|7つのメリット
1.有限責任|株式会社は出資額以上の責任なし
株主の法的責任が投資した資本の範囲に限定されます。
会社の負債が発生した場合でも、株主は自身の出資額以上の責任を負いません。
2.資金調達が容易|株式発行・融資に強い株式会社の資金調達力
株式会社は株式を発行することで資金を調達できるため、金融機関からの融資に頼らなくても企業活動を維持、発展させやすいです。
また株式会社は個人事業よりも金融機関からの融資を受けやすいといわれています。
3.リスクの分散|出資者を増やしてリスク分散
株式会社は多数の株主を持つことができ、これによりリスクを分散できます。
対して個人事業主は事業で生じた全てのリスクを個人で負担しなければなりません。
4.継続性と事業承継のしやすさ|経営者が変わっても会社は続く
株式会社は法人のため、経営者が亡くなったり、株主や役員が交代しても会社は存続します。
そして株式の譲渡によって所有権をスムーズに移転できるため、事業承継が比較的容易です。
会社の信用や取引関係を維持したまま事業を継続しやすいという面もあります。
5.信頼性と認知度の向上|取引や採用に有利
株式会社は法的に保護されているので認知度の向上が見込め、取引先や顧客の信頼性が高まります。
信頼があることで融資が受けやすい、優秀な人材が集まりやすい等のメリットも見込めます。
6.経費計上の幅広さと節税|株式会社の経費と税制メリット
個人事業主よりも経費として認められる範囲が広くなります。
たとえば経営者自身の役員報酬を損金(経費)として計上できたり、事業に関連する支出であれば交際費や福利厚生費なども経費にできるため、課税所得を抑えることができます。
結果として節税がしやすくなり、利益を増やす工夫がしやすくなります。
7.社会保険加入による従業員・経営者のメリット|厚生年金・手当も充実
株式会社に加入が義務づけられる健康保険には、国民健康保険にはない傷病手当金、出産手当金などの手厚い保証があります。
また厚生年金によって退職後の年金額が増えるため、安定した退職後のプランを築きやすい傾向があります。
個人事業者は、厚生年金に直接加入ができないので将来の年金受給額に差がついたり、厚生年金受給者のみに適用がある加給年金、遺族厚生年金、障害厚生年金など手当てが受給できません。
社会保険は株式会社の方がお得
いち:「以上が、株式会社設立のメリットになります。」
かなえ:「個人事業者の場合、将来の年金受給が国民年金だけになるというのは不安がありますね。」
いち:「会社に所属していると将来受給できる年金は国民年金に加えて厚生年金になりますからとても大きな違いでしょうね。
ただし個人事業主にはiDeCoなどの代替策がありますので、厚生年金に入れないからといって一概には言えないものはあります。」
かなえ:「なるほど、会社員だと厚生年金の上乗せがあるけど、個人事業主は自分でiDeCoなどで備える必要があるってことなんですね…
でもiDeCoって、自分で積み立てて運用するタイプの年金ですよね?
運用次第だから、厚生年金とは少しタイプが違うってことにはなりませんか?」
いち:「はい、おっしゃる通りです。
iDeCoは投資リスクも伴いますし、企業が半分負担してくれる厚生年金と比べると掛け金総額や給付の安定性で劣る面もあります。
なので備える手段としてはありだけれど、完全に厚生年金の代わりになるとは言い切れないということですね。
あと他には保険料は会社の経費にできる、というところも会社にとっては嬉しいところです。
個人事業では国民健康保険料を経費にすることはできませんから。」
“経費=損?”会社の経費と節税の関係
かなえ:「経費が増えるのは会社にとっていいことなんですか?
逆にマイナスなんじゃ…と思ってしまったんですが…」
いち:「経費が増えるというか、運営に必要な出費が経費として計上できる、ということですね。
経費が掛かって会社の利益が減れば会社の利益に掛かる税金が減る可能性がでてきますので、個人事業では経費にできないものが、会社では経費にできる、というのは会社化の大きなメリットの一つなんですよ。」
かなえ:「なるほど…!経費が多くなれば納める税金が減るかもしれない、ということなんですね。」
いち:「その通りです。
しかし株式会社設立はメリットばかりではありません。
次はデメリットについて説明をしましょう。」
株式会社のデメリットとは?|3つのデメリット
1.設立・維持コストの増加|会社設立にはお金が必要
・株式会社を設立するには定款認証料(上限5万円)+登録免許税(最低15万円)など、合計で20万〜25万円程度はかかるのが一般的です。
・利益があまり出ていない段階では、法人の方が税負担が重くなることがあります。
・難解な法人税の計算に対応するため税理士に依頼する外注費や、法的義務である提出書類が増えることで雇用の必要が出てきたりと、維持運営コストが高くなる場合があります。
2.情報公開の必要性|株式会社は情報開示が義務
株式会社は情報開示が求められます。
会社の財務状況や業績などの情報は公開されるため、競合他社等によって情報の利用をされる可能性があります。
3.経営の自由の制限|自由に動けない定款や株主の制約
・原則として、定款に記載された事業目的の範囲内でしか事業を行えず、目的外の事業を始めるには手順を踏んだ定款変更が必要です。
・株主が複数の場合、株主の意向によって経営方針や重要な決定に影響を受ける可能性があります。
・株式会社ではたとえ経営者であっても会社のお金を自由に使うことはできません。
不適切な資金の流用は法令違反とされ、時に刑事罰の対象となります。
制約はマイナス?それでも会社が選ばれる理由とは
かなえ:「ルール守らないといけなかったり、会社のお金を好きなように使えない、というのは会社にとってはむしろメリットのようにも思えますね。」
いち:「はい、おっしゃる通りです。
デメリットには挙げましたが、制約が多いというのはそのおかげで信頼されるという側面が大きいと思います。
明確なデメリットといえるのは、コストが掛かることだけなのかもしれませんね。」
かなえ:「会社って誰にでも共通する枠組みがあるので信頼が得られるんですね。
個人事業にも魅力を感じますけど、やっぱり取引先の見る目や将来の資金調達のことを考えると、ちょっと不安が残ります。
もちろんコストはとても気になりますけど…、そのなかでも税金がどれだけ違うのかが気になります。
個人事業と会社の税金についてもっと詳しく教えてもらえませんか?」
いち:「そこは起業家にとって一番気になるところですよね。
では次回はコストの代名詞ともいえる税金について説明をします。
そして、どのくらいの所得が見込めれば会社の設立を考えるきっかけになるのか?
そこも併せてお話しいたしましょう!」