発起人と会社の基本事項を決める・ひとり起業Ⅴ

発起人と設立方法を決める

いち

まずは発起人と、発起設立募集設立のどちらにするのかを決めましょう。

かなえ

はい、説明をよろしくお願いします!

発起人とは

発起人とは会社の設立を思い立ち、会社に出資をする人のことです。

発起設立と募集設立の違い

発起設立
発起人一人の出資で会社を設立します。
発起人が一人であれば出資者が複数いる場合も発起設立になります。

募集設立
友人、賛同者などから幅広く出資を集めて出資者(株主)複数で会社を設立します。

発起人決定後にやること

かなえ:「発起人は私一人で、株主も私一人ですから…発起設立になりますね。」

いち:「そうですね。
発起設立の場合は発起人決定書を作成します(発起人が複数いる場合には発起人会を開いて発起人会議事録を作成)。
発起人決定書は後述の会社の基本事項を決めてからの方がつくりやすいと思います。」

会社の基本事項とは

いち:「会社の基本事項は会社の根幹となる決め事です。
今後様々な場面で必要になってきます。」

①商号(会社名)

②会社の住所

③会社の目的

④役員

⑤資本金の額

⑥株式の数

⑦事業年度

いち:「この中でもう決まっていることはありますか?」

かなえ:「はい、いくつか決めていることがあります。
自宅で開業する予定で、ウェブサイト作成などのウェブデザインをメイン業務にします。
役員は私一人で、資本金は300万円です。
会社名はcreative/K株式会社にしたいと思っています。
株式の数と事業年度は考えたこともありませんでした(笑)

決まっていることも改めて考えてみたいので一から説明していただけますか?」

いち:「もちろんです。
では順番に説明していきましょう。」

商号(会社名)

商業登記法27条に、同一の所在場所における同一の商号の登記の禁止があり※本店所在地が同じところに同じ商号を登記することはできません。
さらに著名表示冒用行為の禁止があり、著名な企業やブランドの名前を登録することはできません。
このように商号にはいくつかの制約がありますので、問題なく使える商号なのかを調べる必要があり、これを商号調査といいます。
商号調査には一般財団法人民事法務協会の登記情報提供サービスなどが利用できます。
※本店とは登記上の会社の住所の事でいわゆる本社とは違う場合があります

いち:「禁止というわけではありませんが、同業他社と似た商号も避けた方が無難ですね。
以前訴訟沙汰になっています。」

かなえ:「creative/K株式会社は大丈夫かな…」

いち:「記号はアンド(&)、ハイフン(ー)、コンマ(.)、アポストロフィ(’)、中点(・)に限られていて、最初と最後には付けられないルールがあるんですよ…」

かなえ:「それだとcreative/K株式会社は無理ですね。
スラッシュは無しにしたほうがよさそうです。」

いち:「商号としての登録ができなくても、ロゴや看板などはcreative/Kでも問題ありませんので、必要に応じて使い分けることもできますよ。」

会社の目的

会社の目的
1.○○
2.○○
3.○○
4.前各号に附帯する一切の事業

このように番号を振って列記していきます。
記載されていないことは原則事業として行うことができませんので、すぐに行う予定がなくても将来やってみたい事業があればあらかじめ記入しておきましょう。
また番号の最後に前各号に附帯する一切の事業と記載しておけば、列記した目的以外の関連事業を行うことができるようになりますので記載をしておきます。

資本金の額

資本金の最低額は1円からで上限はありません。
しかし一定額の資本金がないと取引をしない会社がありますし、融資の際に資本金の額を査定の要素にする金融機関もありますのでそれなりの金額を用意したほうが経営はしやすいです。

いち:「余談ですが、日本で一番資本金が多いの社は日本郵政で、その額は3,500,000百万円です。
重要なインフラ事業ですから滞らせるわけにはいきませんし…このくらいは必要なのかもしれませんけれど桁違いですよね。」

かなえ:「3兆5000億円…」

株式の数

資本金の額=株式の金額×発行株式数になるように株式の金額と発行株式数を決めます。

かなえ:「資本金が元になっているんですね…
株式の金額を決めるのには何かルールがあるんでしょうか?」

いち:「自由に決めて問題ありません。
例えば一株1万円で300株を発行、計300万円。
特にこだわりがないようならばこんな決め方で十分です。」

かなえ:「特にこだわりはないのでそうします。」

発行可能株式総数

いち:「事業拡大の資金を集めるなど資金不足を補う目的で、将来発行株式の数を増やして資本金を増額することができます。
その発行できる株式数の上限である発行可能株式総数を決めましょう。」

かなえ:「なぜ上限が必要なんでしょうね?」

いち:「発行可能株式総数の範囲内でしたら取締役が自由に株式を発行することができるようになるので、上限はブレーキのようなものでしょうね。
そもそも発行可能株式総数を超える株式を発行することは可能なのですが、株主が複数になった場合には株主総会の決議を通さなければならなくなります。
経営者の思い通りにならない場合もありますので、発行可能株式総数は多めに設定しておくことをおすすめします。」

かなえ:「発行可能株式総数を定めるにあたって気を付けることはありますか?」

いち:「資本金が1億円以下だと様々な税務上の優遇措置があります。
資本金の上限は一億円以下、例えば9000万円になるように設定しておけばいいんじゃないでしょうか。」

かなえ:「こちらもその通りにします。
先ほど一株一万円に決めましたから、9000株が発行可能株式総数になるわけですね。」

いち:「その通りです。」

事業年度

事業年度は自由に定められます。
締めの月が決算月になります。

かなえ:「考えてみると事業年度を4月1日から3月31日にしている企業が多いですね。
私もそうしようかな…
定める上で考えなければならないことはありますか?」

いち:「税金の申告は決算月の2か月後と決まっていますので、繁忙期前後を決算月にするのは避けた方が無難だと思います。」

かなえ:「忙しくて大変なことになりそうですね(笑)
でも決算月の決め方によっては…会社のスタートを何か月も待たなきゃいけなくなるって場合もありそうですね。」

いち:「会社設立初年度の事業年度は一年未満になっても問題はありません。
しかし新規設立法人には2事業年度分の消費税が免除されるという特例措置がありますので、会社設立初年度を含め2事業年度合計24か月になるようにしておく方がお得です。
ちょっと考えどころですね…」

※消費税免除は資本金1000万円未満、課税売上高が半年で1000万円以下などの諸条件あり

まとめ

かなえ:「おかげさまでスムーズに決められそうです。」

いち:「それは何よりです!
会社の基本事項を考えていると自分の会社ができていく実感が湧いてきませんか?」

かなえ:「はい!どんどん会社のイメージが膨らんでいきますね。
開業がより楽しみになってきました!」