株式会社設立のメリットデメリットって?・ひとり会社設立編Ⅱ

株式会社設立のメリット

かなえ

今までお話を伺ってきて株式会社設立に気持ちが傾いています。
株式会社を設立する上でのメリット、デメリットを教えてください。

いち

メリットとデメリットを知っておくことはとても重要ですね。
ではメリットからお話ししましょう。

1.法的責任の限定(有限責任)

株式会社の最大の利点は、株主の法的責任が投資した資本の範囲に限定されることです。
会社の負債が発生した場合でも、株主は自身の出資額以上の責任を負いません。

2.資金調達の容易さ

株式会社は株式を発行することで資金を調達できるため、金融機関からの融資に頼らなくても企業活動を維持、発展させやすいです。
また株式会社は個人事業よりも金融機関からの融資を受けやすいといわれています。

3.株主の分散

株式会社は多数の株主を持つことができ、これによりリスクを分散できます。
対して個人事業主は事業で生じた全てのリスクを個人で負担しなければなりません。

4.継続性

株式会社は株主や役員の交代によっても存続できます。
経営者が亡くなったり引退したりした場合でも、会社の存続が確保されます。
取引は基本会社名義で行いますので、交代後も変わらない名称は信用継続にも繋がります。
また名称変更は手間やコストが掛かります。

5.信頼性と認知度の向上

株式会社の名前は法的に保護されていて、信頼性が高まります。
取引先や顧客からの信頼を得やすくなり、企業の認知度が向上します。
個人事業者とは取引をしない企業があったり融資を受ける際に不利になることがありますので、会社と比べて個人事業は事業の幅が狭まる可能性があります。

6.社会保険への加入

加入が義務づけられる健康保険には国民健康保険にはない手厚い保証があります。
また厚生年金によって退職後の生活が安心できるため、安定したキャリアプランを築けます。
社会保険の加入は企業の信頼性や社会的責任を示すものとしてみられることがありますので、会社の信用にもつながります。
個人事業主は厚生年金に加入できないので将来の年金受給額に差がついたり、厚生年金受給者のみに適用がある数々の手当てが受給できません。

かなえ:「将来の年金受給が国民年金だけになるというのは不安になりますね。」

いち:「会社に所属していると年金は国民年金+厚生年金になりますから大きな違いです。
それに健康保険は、加入する団体によって違いますが、それぞれに様々な手当てや特典があります。
また保険料は会社の経費にできる、というところも嬉しいですね。
個人事業では国民健康保険料を経費にすることはできません。」

かなえ:「経費にできるのは会社にとっていいことなんですか?」

いち:「経費が掛かって利益が減れば、会社の利益に掛かる税金が減ることになります。
個人事業では経費にできないものが会社では経費にできる、ということは会社化の大きなメリットになるんですよ。」

かなえ:「なるほど…なんだか株式会社にするデメリットが想像できなくなってきますね。」

いち:「残念ながらデメリットもあるんです。
次は株式会社設立のデメリットをお話しします。」

株式会社設立のデメリット

いち:「株式会社を設立することのデメリットとして考えられるのは以下の3点です。」

1.設立および維持コストの増加

株式会社を設立するには20万円~30万円ほどの費用が掛かります。
それに売り上げが一定額に達していないと個人事業よりも税率が高くなります。
前提として法人である株式会社は法人税、法人事業税、法人住民税を支払わなくてはならない、ということがあります。
法人事業税と法人税は、所得がなければ支払う必要がないのですが、法人住民税(所得金額×税率+均等割最低額7万円で計算)の均等割分は収入の有無にかかわらず定期的な支払いが必要です。
また法的義務である提出書類が増えることで事務手続きが増えて、維持管理にもコストがかかります。

2.情報公開の必要性

株式会社は一般的に情報開示が求められます。
会社の財務状況や業績などの情報は公開されるため、競合他社等によって情報の利用をされる可能性があります。

3.自由度の制限

定款(会社のルール)に記載した目的以外の事業ができない等、経営が制限されることがあります。
また事業が拡大して株主が複数になった場合、株主の意向によって経営方針や重要な決定に影響を受ける可能性があります。
また経営者であっても会社のお金を自由に使うことはできません。
反面個人事業者は法の範囲であればどのタイミングでどんな事業をしてもよく、稼いだら稼いだ分だけ自分のお金として使うことができます。

まとめ

かなえ:「ルール守らないといけなかったり会社のお金を好きなように使えないというのは、むしろ会社にとってはいいことのようにも思えますね。」

いち:「はい、おっしゃる通りだと思います。
株式会社設立をするうえでの明確なデメリットといえるのは、個人事業者よりもコストが掛かるということなのでしょう。
そのなかでも税金の理解は避けては通れません。
そちらは次に改めてお話しすることにしましょう!」